ホルモン補充療法(HRT)

トランスジェンダーにおけるホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy, HRT)は、性別不一致を抱える人々が身体的な性別特性を望む性別に一致させるために行う医療処置の一環です。この療法は、主に男性から女性(MtF)と女性から男性(FtM)のトランスジェンダーの方々に利用されます。

男性から女性(MtF)のHRT

MtFのHRTでは、エストロゲン(女性ホルモン)と抗アンドロゲン(男性ホルモン抑制薬)が主に使用されます。

  • エストロゲン: 乳房の発達、皮膚の柔らかさ、体脂肪の再分布(ヒップや太ももへの脂肪の蓄積)など、女性らしい身体特性を促進します。
  • 抗アンドロゲン: テストステロンの作用を抑えることで、ヒゲの成長、筋肉量の維持、頭髪の薄毛など、男性的な特徴を抑制します。

女性から男性(FtM)のHRT

FtMのHRTでは、主にテストステロン(男性ホルモン)が使用されます。

  • テストステロン: ヒゲや体毛の増加、声の低下、筋肉量の増加、体脂肪の再分布(腹部や腰への脂肪の蓄積)など、男性的な身体特性を促進します。

HRTの効果とリスク

HRTは、トランスジェンダーの方々にとって非常に有効な治療法であり、身体的および精神的な性別一致感を高めるのに役立ちます。しかし、以下のリスクも伴います。

  • 血栓症や心血管系疾患: 特にエストロゲン療法では、血栓症のリスクが増加する可能性があります。
  • 骨密度の低下: 長期間の抗アンドロゲン療法は、骨密度の低下を引き起こす可能性があります。
  • 肝機能障害: 一部のホルモン療法では、肝機能に影響を及ぼす可能性があります。

医療的な監視の重要性

HRTは、医療専門家の監視の下で行う必要があります。定期的な血液検査や健康チェックを通じて、治療が安全で効果的に行われているかを確認することが重要です。●